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カルテットTIPS:その1「カルテット結成」

このページでは、私がカルテットについて思うこと、読んだり聞いたりして 得た豆知識などを書いています。これから室内楽をされる方のちょっとした 参考になればと思います。

室内楽をやりたいと思ったら:メンバー集め、 選曲団体名をつける、 などについて

練習をする!:リハーサルの進め方について

さあ!演奏会だ!:演奏会に向けて。


室内楽をやりたいと思ったら

室内楽をやりたい、と思ったら。
もしくは、だれか友達と「室内楽やりたいねぇ」という話になったら。
それなりに人を集めなければなりません。
室内楽を楽しむにはどんなメンバーをそろえる必要があるのでしょうか。 例えば、編成と目的で次のように分けることができます。

★ 形態で分類するなら、

 ・弦楽四重奏 → バイオリン×2、ビオラ、チェロ
 ・弦楽五重奏 → バイオリン×2、ビオラ×2、チェロ(もしくはビオラ1にチェロ2)
 ・弦楽六重奏 → バイオリン×2、ビオラ×2、チェロ×2
 ・弦楽三重奏 → バイオリン、ビオラ、チェロ
 ・弦楽八重奏 → バイオリン×4、ビオラ×2、チェロ×2

がオーソドックスな構成です。もし、他の楽器を加えるなら、
 ・ピアノ四重奏 → ピアノ、バイオリン、ビオラ、チェロ
 ・クラリネット五重奏 → クラリネット、バイオリン×2、ビオラ、チェロ
など多種多様になります。

★ 室内楽をするにいたる事情(?)で分類するなら、

 ・オーケストラの一員としてアンサンブルの練習をする
 → 弦楽四重奏が勉強になる
 ・カルテットのメンバーに別のメンバー(他の楽器)を加えたい
 → 弦楽五(六)重奏、ピアノ五重奏、管楽器の入る五重奏、など
 ・想いを寄せるあの人と、、、
 → デュオ(二重奏、露骨だと思ったら伴奏をつけてピアノトリオなど!)
 ・オーケストラの仲間みんなで室内楽
 → 弦楽合奏、弦楽セレナーデ、管楽セレナーデ
 ・カルテットのメンバーが海外出張になった
 → 弦楽三重奏、ピアノ四重奏

といったように「室内楽」にはカルテットでなくてもいろんな編成があります。
しかし、圧倒的に「弦楽四重奏曲」が数においても質においても 他の編成より抜き出ています。
というわけで、多くの場合はバイオリンが二人、ビオラが一人、 そしてチェロが一人という弦楽四重奏の形態のメンバーを集めるのが良いようです。

 そして、どんな人を誘うか。これが難しい!
カルテットを始められる仲良し4人組みがすでにいますっ!という方は少ないでしょう。 オーケストラに所属していて気の合う仲間が多いという人でも、 バイオリン二人にビオラとチェロという組み合わせは、 それなりに人集めに労力がいるのではないでしょうか。
 よく、カルテットの結成を”結婚”と同じように喩えられることも しばしばあります。イタリア・クァルテットのヴァイオリンの二人のように実際に夫婦って わけでもないですが、彼らの言葉を借りれば確かに結婚のように(少々大げさか?)、 「相性」とか「コミュニケーション」の問題はかなりあるでしょう。
 相性にはその人自身の性格もありますが、演奏のスタイルや特に音色が大事だと思います。 各プレイヤーの個性も大事で、おおいに議論するのは良いことですが、 自己主張が強すぎてもいけなく押し付けがましいことをしないで相手の意見、スタイルを尊重する、 ということも考えて、演奏の技術面だけでなく人柄的にも合うメンバーを探したいものです。
カルテットのメンバー探しポイントは、同じオーケストラの仲間、習っている先生の同門下生、学校の同期、 年齢が近い、住んでるところが近い、忙しすぎる人じゃない、ショスタコービチが好き同士、 飲み会での勢い(!)、、などなど様々なきっかけがあると思います。
 あと、技術的な面から言えば、 同じ技量程度の4人がいいといえば良いでしょう。 しかし同じとはいえ、楽器を始めたばかりの4人が集まってもカルテットの楽しみを 味わうにはちょっとよりどころがなく難しい。できたら誰か一人、ファーストバイオリンに上手な人を 誘ったほうが、練習もスムーズに音楽の楽しみもリードしてくれるでしょう。 また、「音色」が一緒で音が溶け込みやすい技術も大切で、和音がチューナー上合っているはずでも、 綺麗に聞こえない場合があります。 同じ音でも和声を考えた上で音程の微調整や音量バランスなどを考える必要もあります。


曲を選ぶ!

 さあ、めでたくメンバーが決まりましたら、曲を選びましょう。 もっとも、メンバーを集める段階で「この曲がやりたい」から集まった場合は その手順はもう済んでいるでしょうが。室内楽をやる上で この選曲は最も楽しい作業の一つではないでしょうか。 ちょうど旅行の計画を立てるのに似ているんじゃないかと思います。 「この曲もやりたいし、あれもいいなぁ。いや、ブラームスも捨てがたいしなぁ・・・」
このカルテットページで選曲の参考に目星をつけてもらって、ヤマハや 民音とか、CDを聞いたりして、ご自身の気に入った曲を選んでいただけれ ばいいかと思いますが。選曲をする上で注意する点。

・各人が満足できる内容か?
・いま取り上げるのに適切な難易度か?
・やって楽しい曲、やりがいのある曲か?
・演奏会のように人前で行う場合、聞き手に苦痛を与えないか?

などに気をつけるといいと思います。
 みんながこの曲をやる上で、メンバーみんなが楽しめる曲かどうかは、 練習する段階のやる気にも関係して大事でしょう。どこかのパートに 不適切にオイシイ所や負担が偏りすぎるのはあまり良くない。 例えば、やたらチェロばかり目立つ曲でも他のプレイヤーが退屈してしまう。 それでもっても素晴らしい曲だ、とみんなが納得して取り組むならいいでしょう。
 難易度も不適切に難しいと苦労ばかり多く、楽しみを感じる前に 滅入ってしまいます。初めなら、ハイドンやモーツァルトのシンプルな曲で メンバーで共有すべきで、基本的な技術を身につけお互いの特徴を認識してから、 アンサンブルの込み入った曲やテンポの揺れる曲など応用技術がいるような 曲に進んでいくべきです。はじめは、お互いの癖なり考えなりをつかみやすい スタンダードな曲を選んだほうが後々のためにもいいはずです。
 これとは別に、その曲が名曲である必要があります。確かに前述の通り 勉強になる曲をするのがいいとは書きましたが、そうだからといって あまりにつまらない曲を選ぶのも、練習のやるきと本来求めるべく「楽しさ」 が得られないという点から良くないと思います。シンプルでも 美しい旋律、弾いてて楽しい曲を探しましょう。
 最後に、もし幸運にも(不幸にも!?)発表する機会があって、それに向けて 選ぶのでしたら、お客さんのこともちょっと気にしましょう! だって、、、 聴かされる方だって人間ですから! 長すぎる曲、現代音楽、誰も知らなさそうな 掘り出し物、などなどは、プレイヤーにそれなりに技術があって聴衆を 弾きつける能力があるなら良いのですが。 お客さんがいる場合は、能力に応じた十分に聞き手を満足させられる 曲を選ぶべきで、やりたいからヤルっ!というのは、、、良くない。
 以上、ズラズラ書きましたが。結論。

 名曲をやる。

 なんだ、何の参考にもならんじゃないかぁ! っておっしゃるかもしれませんが、 やっぱり以上を考えると名曲は名曲。それは初心者から玄人まで 重宝すべき取り組むべき曲なのでしょう。 まあ、このホームページで言えば、「オススメ」マーク の付いているもの。もしくは "オススメ曲"のページをご参照ください。
 初めて組むメンバーなら、練習としてお互いの技術を確かめ今後に発展させようと 思うのでしたら、ハイドンの有名な番号→モーツァルトのハイドンセット→ ベートーベン初期は取り組んだほうがいいでしょう。 その後でやりたい曲をやったほうが、ぐっと練習もやりやすくなるはず。

 では一例として、僕が大学生の時に始めて4年間で取り組んだ曲(演奏会)で例を挙げますと。 (以下の合間に試しにやってみた曲はいろいろあります)
1年生:ハイドン:カルテット「日の出」、モーツァルト:カルテット第15番、ベートベン:カルテット第4番。
2年生:ヤナーチェク:カルテット第1番「クロイツェルソナタ」、ドボルザーク:ピアノ五重奏曲、カルテット「アメリカ」、 メンデルスゾーン:オクテット、ピアノトリオ1番
3年生:ラベル:カルテット、ベートーベン:七重奏、チャイコフスキー:「フィレンツェの思い出」、ブラームス:ピアノカルテット3番
4年生:ドボルザーク:ピアノトリオ3番、シューマン:ピアノカルテット、ショスタコービチ:カルテット第10番、スメタナ:カルテット第1番「我が生涯」

我ながら、若いうちはよくやったものだ。ふぅ。 やはり古典ものからロマン派、近代へと挑戦していく流れでした。


団体名をつける

別に、団体名をつけなきゃいけない訳ではないですが、せっかくなら 名前をつけて世の中(オケ内)に認知してもらいましょう!
結成時でなくても演奏会をするに当たって名前をつけてもいいのですが、 これが結構いい名前って思いつかないんですよね。 たまに、団体の特徴をとらえているのはいいのですが、「3人の美女と 低弦の野獣」だとか「○○女王様カルテット」とかいったのを 聞いたりしますが。あまりつまらないギャグ的なのは僕は好きじゃないな。
では、世間の有名な団体名はどうなっているのか。
 まず、その団体名を構成しているメンバーの一人、 ファーストバイオリンの名前を使っている場合。 これは、歴史が古く、ヨアヒム四重奏団などがあったり、 リーダー的な存在の強い団体に多く取られている。 スーク、バリリ、カザルス、、、など。変わった例に、 メロスカルテットは二人のメンバーの名前メルヒャーとフォスの 名前を少しずつ足している。
 作曲家の名前 を取っている場合で、アマデウス、ベートーベン、 ヤナーチェク、スメタナ、ボロディン、アルバン・ベルク、、などなどその名に恥じない 超一級のカルテットがずらりと並ぶ。
 他は、楽器製作者 のグァルネリ、アマティや、所属する学校や オーケストラから取った、ジュリアード、カーティス、イェール各音楽学校に、 ウィーンフィルやベルリンフィルなどの著名オーケストラ。
 地名 も多く、イタリア、ブダペスト、プラハ、東京、、、などなど。 面白い例は、ラサールの場合で、彼らがまだ無名だった時にプロモートされた ときに掛けていた電話の場所が、たまたまラサール・ストリートからだったために そのままその名前になってしまったそうです。
 自分たちが思いついた、いい言葉や単に室内楽や音楽という言葉を、 イタリア語やラテン語にしたりするというのもありだと思います。 僕が大学時代の時のカルテットは、たしか、2年生のときに初めての演奏会が近づいて、 あっカルテットの名前を決めなきゃって時に、その演奏会で弾く楽譜の表紙に「Smykovy」(たしか こんなスペル)って書いていたので、なんか知らないけどこれをそのままローマ時読みにして 「スミコッビィ」という安直な団体名にしてしまった時もありました(・_・;)。 あとで知ったのですが「弦」という言葉のチェコ語だとかでした。

楽譜をどうする?

前節で、メンバーも揃い、曲のめぼしがつきましたら、練習を始めましょう。
練習をするには当たり前ですが、楽譜を用意します。 楽譜はどこで手に入れるか?  ・・・

1.ヤマハなど楽器屋で購入する。
2.楽譜専門店アカデミアミュージックなどで購入。
3.民音(千駄ケ谷、慶応病院のとなり)で借りてくる。
4.だれかに借りる。
一番正当なのが購入するということ。ですが、楽譜って言うものは 値段が高い。特に輸入ものはぺらぺらのでさえ下手したら数千円してしまう。 ということで、ためしにやってみるとか練習のためにちょっと 触ってみるとか、CDを聞いていて見たくなった、などでしたら、 民音に豊富に資料があります(ちょっと開館日時などで不便ですが)。 もし海外へ行く機会が合ったらついでにほしいものを 買っておくのもいいでしょう。有名なところではウィーンの ドブリンガー。 日本で買うよりずっと安い。ほか、出版社は本HPのリンクのページを参照ください。

 楽譜は同じ曲でも数社から出版されていることが多いです。 どの会社を選ぶかは難しいのですが、あまり元譜に手の加わって いない譜面がいいです。編集者(音楽学者)が勝手に解釈をいれて スラーをつけてみたり、ボーイングが書いてあったり、 時には強弱記号が書き加えられていたりするのがあります。 それを見分けるのはわたしも良くわかりませんが、 Edited by だれだれ、とかですと(ソロ譜面などに多い)作曲者でない 後世の人の書筆のある楽譜です。 それを参考とするか邪魔とするかは考え次第ですが・・・


次、「練習をする」!

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