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カルテットTIPS:その3「さあ、演奏会だ!!」


演奏会で発表しよう

 練習をしていると自然とだれかにその成果を お披露目してみたくなるもの(そんなことないですか?!)。 また、何か発表会なりがないと練習の締めくくりがなく、ただ漫然と集まって室内楽をするのも1回2回ならよいですが そう長くは続かないでしょう。 それに、室内楽の演奏会があるからそれに向けて練習を一所懸命することで上手にもなります。 いずれにしろ、発表の場はあったほうがいいです。 もちろん、自分たち1団体だけでその夜のコンサートのプログラムをこなしてもいいですが、 いくつかの団体で共同開催するというのも多いようです。

プログラミングはどうするか?
たいていの一回の室内楽の演奏会プログラムの分量は途中休憩入れて二時間前後。 そうすると4楽章形式の曲が3曲とかが多いようです。また、大きい曲を1曲メインに据えて、ポピュラーな 小品を多く取り入れたりする時もあります。共同開催なら3団体で各1曲ずつとか、2団体なら2曲ずつか 2曲と1曲で分担したりなどすると良いでしょう。

演奏会場はどこにするか?
演奏会の場所としては、小ホール、室内楽コンサートホールから、 スタジオ、公民館や学校などの音楽室とか、 さまざまなところで可能です。しっかりきちんとしたコンサートをするなら 専門のホールや教会など。また気軽なサロンパーティ形式もオススなのですが、 飲食可能なスタジオなど で、友人などをまねいてお酒やかるい食事などをしながら、 演奏を聴くだけでなく休憩や演奏後に談話などしたりして お客さんと楽しい時間を過ごす形式です。僕もこういったホームコンサートのような アットホームな楽しい演奏会も多く見受けられます。

ぼくが最近使ったり聴きに行ったホールをいくつかご紹介します。客席はおおよそで、予算は利用日や時間帯、 リハーサルの有無、入場料により変わるので週末に昼夜で借りた場合の目安です。詳細は各施設でご確認ください。

室内楽向けのコンサートホール
すみだトリフォニー小ホール:錦糸町から徒歩5分、客席250人前後、予算5万円位
ティアラ江東小ホール:住吉より徒歩5分、客席140人、予算4万円位
ムジカーザ:代々木上原、客席120人、予算6万円位
アスピア:幡ヶ谷、客席100人弱、7万円位
Karura Hall:千歳船橋か経堂より10分、客席100位、予算4万円位
オペラシティ近江楽堂:初台より徒歩3分、客席120位、予算7万円位。
東京建物八重洲ホール:東京駅より3分、客席100人位、予算10万位
コア石響(しゃっきょう):四谷から徒歩10分、客席100人位、予算7万円位
やなか音楽ホール:西日暮里から5分、客席100人、予算7万円くらい
自由学園 明日館(みょうにちかん):池袋から徒歩10分、客席200人位、予算10万円位
ルーテル市ケ谷:市ケ谷から7分、客席200人、予算13万円位
牛込箪笥町区民ホール:牛込神楽坂すぐ、飯田橋、神楽坂より10分、客席400位、8万位
アトリエ ムジカ:代々木、客席100人位、予算7万円位
ほか、王子ホール(銀座)、白寿ホール(代々木公園)、音楽の友ホール(神楽坂)といった素晴らしいホールがありますが数十万くらいします。


演奏会に向けた準備

 さて、発表の日時が決まりましたら、一生懸命さらわなくては いけません。まだ団体名を決めてなかったら、うんうん知恵を絞っていい名前をつけましょう!  あとは衣装を考えたりするのもいいですね。 別に「アメリカ」を弾くからってみんなウエスタンスタイルにしなくてもいいですし、 ショスタコだからって赤い格好をすることも無いですが、 礼儀として、ジーパンやラフ過ぎる格好は好ましくないです。
あくまでも、クラシック音楽は社交的な場で演奏されるもの。堅苦しく 正装するまではいかなくても、きちんとした格好で。 演奏会の日は、ちょっとおしゃれなネクタイをしたり、素敵なワンピースを きたり、靴をみがいたり、トワレをもうひと吹きよけいにするとか。。。

 おっと。おしゃれの話よりも、そうそう、練習のことについても。
まずしっかり個人でさらっていること(当たり前ですが)。 練習量が少なく自信が無いまま本番を迎えると、舞台上で余計に緊張してしまうものです。 できるだけ自信をもって望めるように十分に個人練習 をしておきましょう。 なにもスメタナ・カルテットのように暗譜で本番をやるなんて "離れ業"をすることもありませんが、ここ一番の聞かせどころや、 アンサンブル上重要なところなどは暗譜できるくらいにしていた方が上手くいきます。
 逆に、もし「あー、ココ、いくら練習してもうまく弾けなさそうだな・・・」というところが あったら!!ごまかし方も考えておくほうがいいかも。 あくまでもアンサンブルすることがベースですから、弾けないのを無理になんとかしようとしてしまうがために、 そこだけテンポが崩れたり、リズムが不正確になったりすると、 他のプレイヤーにも影響を及ぼし総崩れという最悪の事態になってしまう ことさえあります。たとえば、弾けない和音ならスコアを調べたりして 他パートが弾いている音を除いてみたり、速くて弾けないパッセージは 荒が目立たないようにちょっと音量を控えてみたり (こうすることで余分な力が抜け弾けるようになることもある!)、 一方、万が一「落ちた」場合にどこから復帰できそうかなども怪しいところは 準備していると良いでしょう。
もちろん全部しっかり弾けることが望ましいですが、 全体として上手く行くことを優先して、無理をしないという考え方もあって、 本番前にはちょっと考え工夫しましょう。

 全員で注意することは、 フェルマータやリタルダンドの後の出だし(ザッツ:Satz)がきちんとできているか、 締めくくりの和音が100発100中綺麗に出ているか、 sfz(スフォルツァンド)が皆正しく譜面どおりにやっているか、 伴奏の音量が旋律をつぶしていないか、出だしの音の雰囲気は 上々か・・・などなど。そして、通し練習をしておくこと。
本番をイメージして通しておきましょう。そう、楽章間の譜めくりも静かに! あと本番中に、あれ!この繰り返しはどうすんだっけ?!、なんて慌てて 隣りのプレイヤーに小声で合図を送ることの無いように、 繰り返しをどうするかの確認を忘れずに。 繰り替えしをするなら○、しないなら×、1カッコをとばすなら1カッコに バッテン×を書きこんでおきましょう。 ロマン派や近代になると楽章の間でも転調がありますので、 自信が無ければ転調した||ダブルバーの#や♭達をカラーペンで塗っておくのもいいです。 転調した後の変化した音符に♯♭を書き込むことも間違い防衛策です。 この転調したのを忘れてそのままシャープをつけたまま演奏しまうと、 聴衆も演奏仲間も舞台マネージャーもズッコケてしまうことに・・・(~_~;;;)

 ちょっと、もう少し演奏の上をめざすなら。
 録音して客観的に聞いてみましょう。MD(なければ普通のテープ) で曲を通しで録音してみましょう。音程の悪さ、クレッシェンドが足りない、 旋律が聞こえにくいなどなどが分かってきます。 ビデオなどをとってみれば自分たちの演奏する姿もチェックできます。撮ってみてみると意外と つまらなさそうに弾いていたりします。プロのような派手な演奏のまねをする 必要は無いですが、やはりプロ・プレイヤーの演奏には、 的確なアイコンタクトがあり、弓や体の動きが非常に音楽的に自然で、顔にも時々に表情が表れています。 それにくらべ、自分たちといったら、しかめっ面で体も硬いし、、、など、いろんなことが見えてきます。 無意識のうちに足でリズムを取ったりの様な癖も分かります。


今日は演奏会!!・・・当日の準備

演奏会当日の朝。いよいよやってきました! まずは自宅で音程の最終チェック
ピアノやチューナーで危ない音程を客観的(?)確認。 たまに出てくるオイシイ旋律ももちろんさらっておく(^.^)。
確認を終えたらケースに楽器と弓と替え弦をしまい、譜面をカバンにしまう。そう、確実に!
今日の演奏会の服装は紺色をベースという約束なので、ぼくはブレザーにスラックス、濃い目のブルーのシャツに濃紺のGAのネクタイ。 そして、胸ポケットには赤い薔薇・・・じゃなくて、目立たない 黒のハンカチを取り出しやすいジャケットの左に。 演奏中に弓や指盤の汗や、弦についた余分な松ヤニをふき取るためです。
写真は、とあるオケの有志団体による合同の室内楽演奏会を開催したときの様子です。 飲食可能なスタジオを借り切って、友人家族にオケ仲間をご招待しての発表会。 参加費はプレイヤー各人一人5000円くらいでお客さんは無料。 安く上げる&アットホームな雰囲気作りのために、 出演者は手作り料理か酒の一品持ちより制になっていました。

午前から各団体平等に時間を割り振ってステージリハーサル。 譜面台や椅子、録音、お酒やつまみの準備をみんなでして、 夕方ごろ開演。
 演奏者も客席で聞いたりして、お友達などのお客さんの入りも反応も上々。 そして、2,3団体(1時間)毎に休憩が入り、みんなで アルコールをいれながら談笑もすすみ和やかな雰囲気で演奏会はすすみます。 もっとも、休憩中に和やかに笑みが出るのは出番が終わったプレイヤーですが。。。 出番がこれからの僕なぞは、ガソリン(ビール)を注ぎ込んで気合を入れてます。 (弾く前に飲むのはいけないって・・・?^_^;)

 * * * * *

本番前のちょっとした心配り次第で演奏がスムーズにいくか、 トチルかが別れたりします。次のことに気を配ると良いと思います。

・譜面
 譜面はきちんと順番に(もちろん製本しておくこと!)ならべて 譜めくりがしやすいように、譜面の右端をちょっと折っておく。

・椅子と譜面台のセッティング
 椅子はもちろん人数分いるでしょう。全員が座って演奏するのが普通だと思いますが、 会場と人数の都合でチェロ以外は立って弾かなくてはいけないことも。 その昔、大バイオリンニスト、シュポーアが自分だけ立って演奏したり、 フランスのヴィア・ノヴァ四重奏団がそういうタイプらしいです。
 ま、それはいいとして、椅子と譜面台の位置が意外ときちんとしてないと 思わぬ事故が起こってしまうのは知られてないのでは。 譜面台のセッティングの基本として、三本足の場合は二本が手前になるように 置くこと。三本目が自分と反対向こうにおく。こうすることで、自分の足で 引っ掛けたり、譜面をめくったりする時に誤って譜面台が転倒するのを 防ぐことができますし、見た目的にも綺麗。譜面台の高さは 個人差があると思いますが、低すぎるとメンバーとのコンタクトが 取りづらく、表情もうつむき加減になってしまいます。

 椅子の並べる位置も、あまりステージの前過ぎたり後ろ過ぎたり、左右の バランスがステージ中心からずれないように。そして、それぞれプレイヤーの 位置が離れすぎると、相手の音が息遣いが遠のいてしまい、 弾いていて心細くなってあがってしまうことも。ぶつからない程度に コンパクトにまとまったほうが演奏しやすい。そう、いつもの狭い リビングでやっている時くらいの馴染みの距離が心強い。

・エンドピン
 チェロの人はエンドピンをあらかじめ出しておくこと。 たまに、舞台に出てきてから椅子に座りずるずるとエンドピンを引き出して、 伸ばしたり縮めたりモゾモゾする人を見かけますが、これは良くない。
 そのしーんとした間に待たされるプレイヤーや客に、 無用な間が緊張を生み演奏に差し支えます。できたらステリハなどで椅子に座って 長さをみておき、本番ステージに出る時にはエンドピンは出しておきましょう (もとろん出る時には引っ掛けないように注意)。
 弓も張り忘れないか舞台袖でチェック。 僕は一度本番で、弓を張り忘れて弾き始めてしまったことがあります。

・チューニング
舞台袖、控え室でチューニングをしておきましょう。チューニングメータを つかってもいいのですが、チェロのAに合わせたほうがスムーズ。 いまではアジャスターで微調整が楽ですが、ペグで合わせるプレイヤーがいる場合は バイオリンに合わせたりすると、キリキリ上げたり下げたりして時間がかかり、 時にはバチン!と切れてしまったり・・・とにかくチェロの調弦はむずかしいのです。

 最後に、ビオラとチェロでC線があっているか確認。そして、 ほんの少しだけ高めに。バイオリン弾きはなぜか弾き出すと高めの音程を 好むので、なにも考えずにCをブーッとやってしまうと、和音が合わない ことも。逆に、ビオラ、チェロは音程が「ぶら下がる」ような傾向があるので、 この辺は普段の練習からお互いの性質を知っているといいのですが・・・
 また、ステージはライトが当たって弾いているうちに暖まって下がってきます。 その辺も留意して(楽器により差がありますが)演奏中にも時々、調弦に気をつけましょう。

・ハンカチ
 あと、手に汗をかく人でなくてもハンカチは持っていたほうがいいです。 楽章間で弦についた松脂をふき取るのにもつかえます。真っ白になってしまったら 松脂のつけ過ぎ。弦に松脂がこびりついていると良い振動が得られないそうです。 色は目立たない黒かもしくは白にしましょう。


演奏、そして終演

以上、準備万端。司会の紹介と共に会場からの 励ましの拍手がおこりましたら、さっそうと出て行きましょう。 ぺこぺこお客さんにお辞儀しながら頭をぽりぽりかいたりと、照れ隠しとかしちゃいけません!
 4人そろったところで、さっとお辞儀。頭をさげることもないかもしれませんが、すでに緊張で心臓バクバクでもしっかりと お客さんに顔を見せて自信のある”振り”をしましょう。

 司会がいない場合は、自分たちで自己紹介と曲の簡単な 紹介くらいするとお客さんは助かります。 「何分くらいか」というのもあったりすると、聴くほうに、これからどれだけ我慢しなきゃいけないか(笑)という 目安として良いかも。 長すぎたり、ウケを狙いすぎたり、内輪ウケにはご注意。 楽章がつながっている場合はお知らせしていると、曲を知らないお客様には親切かも。 知らない曲の場合、3楽章だと思って聞いていたら、実はアタッカで4楽章に切れ目なく突入していて、 いつ4楽章になったか気づかず最後までいってしまった、なんてことが良くあります。


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さて、話は戻って、さきほどの演奏会では、なぜか今回はチェリストの僕が団体&曲の自己紹介役になってしまった。 (なぜなら、出だしが3小節休みだからと、わけのわからん理由!)。
ショウガナイ。こほん。
「これから演奏する曲は、ショスタコービチ弦楽四重奏曲第7番です。 作曲者はこの曲を亡き婦人に宛てて・・・<中略>。3楽章ありますが全楽章つながっていて、演奏時間は約13分ほどのご辛抱です。」

 さて、軽く椅子を引いて座り、椅子の位置、弓の張り、ライトの当たり、 などなどチェック。譜面の1ページ目をだしたら、 舞台チューニングはガーガーとデカイ音でやらないように。 軽く弓先でちょんちょんと軽くスマートに確認しましょう。 そして、準備できたよ、ってメンバーに目配せ。
 一息呼吸したら、あとは何とかなる! と覚悟を決めて、始めましょう。

 * * フィナーレ * *

じゃん、じゃ、じゃじゃ〜ん!
パチパチパチパチ・・・(拍手)

幾度とあぶない箇所もあり、お客さんが、あ!危ない! と息を のむシーンもありましたが、なんとか息絶え絶え、ゴールイン。
見ていたほうも緊張の連続か、伸びをしたり肩をほぐしたり、 終わってほっとした雰囲気がする。アクション映画さながらの一幕。 弾いている本人にしては、 終楽章のコーダになってやっと余裕が出てくるころには、あーもう 終わりかぁ、とFineと書かれた終止線に達するのが惜しい気持ちになって いたりする。

良かったよ、ご苦労様、もしくは最後までなんとかたどり着いた安堵(?!)とも取れる観客の拍手をあとにして、 控え室へ逃げるように帰ってくると、一言。
「あ"ー、つかれた」
そのあとは、あそこがやばかっただの、あの出だしはうまくいったねぇ、 など言い訳大会が始まります。だけど、相手の失敗はなるべくなら オブラードに包んで・・・いじめるのは、ちょっとだけにしてあげましょう。

しかし、僕らのカルテットのビオリストぶっちゃんは、遠慮しない。
「ちょっとぉー、Dの所、しっかり出てよぉ! もぉ! こっちまで どうしたらいいのか、分かんなくなっちゃたじゃないの!」
まあ、長いあいだの付き合いなので、こっちだって応戦。 しかし、普段から仲が良いからこそ突っ込み恕突き合えるもの。

そして、客席に戻るとお客さんの反応もまずまず。

「いやー、雰囲気出てたねぇ」
「終楽章は迫力あったね、難しかったでしょ」
「上手ですねぇ。良かったですよ、始めの紹介が楽しくって。」(-_-;)

など、いろいろ感想を言われましたら、とりあえず最後まで聞いてくれた お礼を述べて、適当にあっさりとした謙虚な返答 をしましょう。

「いえいえ、曲が素晴らしかったからですよ」
「うん、かなり練習したよ。一番ヤバイところだったからねえ」
「あははは・・・、腕より口のほうが達者ですから」(~_~;)

 * * * * *

 自分の出番が終わってしまったらもう気楽なもの。 ワインもテーブルのつまみも旨い!! 
他の団体を聴いたり、お客さんと世間話したり、 メンバーと次回のプランなどを語るのも楽しいです。 すべてのプログラムも終わり、最後に校歌斉唱。。。じゃなく、 なんとなく集まってチャイコフスキーの弦セレをみんなで合奏。 宴もたけなわとなり、皆で後片づけをしたら解散です。
マナーを守って、いろいろ工夫して、腕を磨くべく努力して、 楽しく演奏会をする。別に完璧な上手い演奏で無くたって、 いろんな意味で楽しめるのが室内楽。 一度楽しみを知ってしまうと、次もまたやってみたくなります。

ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。 あとは各曲の紹介のページへお進みください・・・


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