Copyright by M.Yokoyama

究極の名曲
String Quartet Chapter 4

☆この章で紹介する作曲家
バルトーク
コダーイ
ヤナーチェク
ストラビンスキー
シェーンベルク see Chapter 2
ベルク
ウェーベルン

完全にプロフェッショナルの領域です。
この辺になるともうアマチュアにはなかなか手のでない範囲でしょう。 しかし果敢に挑戦するのもアマチュアの成せる特権である! 十分に経験を 積んだカルテットなら、自己を鍛えるにも次のようなものもいいのではないでしょうか。 まあそう「えー」とかいわずに、CD聴くだけでも、 ヤマハで譜面を見てみるだけでも、どうぞ。

この部類においてまずイチオシなのは、、、

バルトーク Bartok, Bela, 1881-1945

バルトークについて(link): biography and pictures

Bartok, String Quartet No.1 Op.7 1908
5/6 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

 これはまだ十分挑戦可能でしょう。ベートーヴェンの後期につながり、先程 の印象派の 影響もあるロマンチックな面がまだ残っている。バルトークならこれから手を 付けるといいでしょう。
しかし、、、

Bartok, String Quartet No.2 Op.17 1920
7/7 vn 2 va 1 vc 1
Bartok, String Quartet No.3 1927
7/7 vn 2 va 1 vc 1
Bartok, String Quartet No.4 1928
7/7 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
Bartok, String Quartet No.5 1934
7/7 vn 2 va 1 vc 1
Bartok, String Quartet No.6 1939
7/7 vn 2 va 1 vc 1

 これらは非常に難しい。どうしようもない。
しかし、個人的には、「4番」がバルトークの6曲のカルテットのなかでも っとも(すべてのといってもよいかも)密度の濃い「数学的に」 計算し尽くされた作品と思ってます.
技術的にもアンサンブルにもアマチュアのみならず究極の難しさだろう。 あえて難易度も6まででは足らず7をつけてしまう。 ぜひ一度聴いてみてください。バルトークの緻密で天才的な創作に慣れてくると、 これほど度肝を抜かれるカルテット曲は他にないのでは。
2番は聴いていても難解。
3番は、短いが中身が濃縮果汁。重音のグリッサンド付き。
5番は完成度が最も高く聴いていても楽しい。音程をわざとずらした効果を とりいれている。ある演奏会にて「あれ、さっきの音程まちがってなかった?」 と思ってしまう人もいたりする。循環系式。
6番は、また古典的な 立場の構想に戻っている。グリッサンドを多く使ったジプシー風の マーチや、オケコンの5楽章のフーガの主題を思わせる3楽章など、 酔っぱらいのような旋律が聴いていても面白い。しかし、このころは大戦中の 重苦しい時代背景があるということには注意。
「グリッサンド(gliss.)」は、粘り気のあるボーイングで(右手は抜かないこと)、 左手の音のずらしは 早過ぎないこと。上昇するグリッサンドなら、左手の上昇する速さは 始めは早く動かすが、到達点に 近づくにつれて減速させる。大げさにやるくらいで丁度いいかも。


コダーイ Kodaly,Zoldan , 1882-1967

バルトークとと もにハンガリーの代表。民謡研究家でもある彼が2つのカルテットを書 いている。まだ2番が親しみやすい。
Kodaly, String Quartet No.1  1909, Op 2
6/6 vn 2 va 1 vc 1
Kodaly, String Quartet No.2 1918, Op 10
5/5 vn 2 va 1 vc 1

民族の雄叫びとも言える、と書いてあった。 二番はやってみたい。一番は出だしはインパクトあるけど、ちょっと長いしフィナーレが理解できない。


ヤナーチェク Janacek, Leos , 1854-1928

ヤナーチェクについて(link)

彼も民俗音楽研究者である。 カルテットではよく知られた作品が次の2つである。

String Quartet No.1 「クロイツェルソナタに 刺激されて」 1923
6/7 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
String Quartet No.2 「内緒の手紙」 1928
6/7 vn 2 va 1 vc 1 4楽章
両方ともかなりの年をとってから 書かれた作品で、非常に充実した感じがする。 ちょっと名前からして怪しげな雰囲気の曲であるが、どちらも非常にかっこよい。 これらのあやしく不思議な世界に一度はまると、 頭にあのメロディがこびりついてしまう。独特のヤナーチェクワールド。 しかし、譜面は難解。
1番の難しいところは、テンポが至るところで変わることで、 1楽章では15もテンポが変わる。 長いあいだやって来たお互いの呼吸とかが必要である。 テンポの変わる節目の練習は、先に、次に弾くテンポを確認してから、 その変わり目を4人が同じテンポ感を共有できるまで繰り返すと 上手くいくでしょう。
3楽章のオクターブで降りてくるシンコペーションのところと、 4楽章の♭六個になったあとの3連符Pizz.とシンコペーションの アンサンブルがとくに難しい。
さて、冒頭、チェロに始まる不思議な旋律は・・・なんでしょう?? 妖し過ぎる。 そもそも曲のタイトルの「クロイツェル・ソナタ」は、トルストイの短編によるもので、 ある婦人が、ベートーベンのクロイツェルソナタを弾いたバイオリンニストの 家庭教師と不倫に落ちて、結局、旦那に撃ち殺されるという、なんとも不健全な話し。 この婦人と旦那の苦悩の心理を想像しながら旋律を聞くのもまた楽しいですね。 例えば、1楽章は平穏ながら幸せな生活。怪しい旋律は、それなのにモヤモヤした 心情を表しているのか。 3楽章では、婦人の良心に悩める心と胸騒ぎのような32分音符。 (とあるCDでは、この32分音符をスルポンティチェロのように駒の近くで キャシキャシと激しく弾いていた!) 4楽章では過ちやら苦悩やらそして悲劇的な結末。
さて、2番は、4楽章が楽しい。耳に残るノリの良いフィナーレ。 若い女性との恋文の告白らしいですが、謎。 1楽章の重音の主題は弾きにくそう。ベースになるトリルのロングトーンは、 べれべれべれえ〜〜、っと遠慮なく弾いたほうがしっかりすると思います。

ストラビンスキー Stravinsky, Igor Feodorovich, 1882-1971

3 Pieces for Srting Quartet 1914, op.2
4/5 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
結構楽しめるのではないのでしょうか。非常にあっと言う間に終わる曲で、 全部でも5分ぐらい。気が向いたときにちょこっと遊んでみるとい いとおもいます。

Concertino for String Quartet Op.20
7/7 vn 2 va 1 vc 1 冒頭
作品番号で言えば「春祭」のすぐあとの作品。曲のつくりもそれに近いが、 さらに現代的。まあ聞いてみるぶんにはいいでしょう。 この曲をやろうという人はいるのかなあ。。。。


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新ウィーン学派のふたりの作曲家の作品を紹介します。シェーンベルクは chapter 2 で紹介してます。

ウェーベルン , 1882-1971

シェーンベルクとの出会いによって作曲家として大成し、生涯変わることなく ベルクと友情を結んでいました。はじめはチェロ奏者と指揮者を志していていました。 12音技法、無調の作品もですが、 ウェーベルンの独自な路線として「主題の無い音楽」があり、 極端に切りつめた短小楽曲「弦楽四重奏のための6つのバガテル」などがあります。

String Quartet 1905
6/6 vn 2 va 1 vc 1
シェーンベルクに師事しているときの作品番号のない単一楽章の曲。 セガンティーニの未完の絵にインスピレーションを得て、そのくらい雰囲気に 共感を得たという。この曲の前に「ラングザマー・ザッツ 緩徐楽章」を書いている。 まだ、調性の感覚は若干残っている。

five state for Srting Quartet Op.5 1909
6/6 vn 2 va 1 vc 1
「弦楽四重奏のための5つの楽章」。 ウェーベルンの作曲手法の転換期の作で、完全に無調的な語法でかかれている曲。 各楽章は、激しい楽章と遅く静かな楽章といろいろなバリエーションをもってますが 集約的で密度の高い短い音楽。

もうひとつ小曲をあつめたような「6つのバガテレ」Op.9もある。素晴らしいとされる 「つまらないもの集」(フランス語でそういう意味らしく、そこから転じて器楽小品を 指す言葉である)。
Srting Quartet 1936 Op.28
6/6 vn 2 va 1 vc 1
ウェーベルンの存命中の最後の3楽章の作品。彼自身がかなり自信を持って 作り上げたものといわれている。各楽章の「形式上は」古典的な カノン、スケルツォ、フーガなどの技法が用いられている。


ベルク , 1882-1971

シェーンベルクを師匠として多くの影響を受けた。彼の中では「23」 という数字が自分の宿命的は数字としている。

Srting Quartet 1910 op. 3
6/6 vn 2 va 1 vc 1
極度に入り組んだ対位法、半音階的な声部進行、変化に富んだ荒荒しい リズムと伸縮自在な速度、などなど彼の独自性が盛りだくさんの曲。ソナタ風の 1楽章と、ロンド風の2楽章からなる。

Srting Quartet Lirische Suite 1926 op. 3
6/6 vn 2 va 1 vc 1
「叙情組曲」。ベルクにとって初の12音技法の曲。人妻ハンナとの遂げられぬ愛を 主題的要素としていて彼女に捧げられている。動機にハンナとベルクの頭文字と ベルクの数をあらわす23、ハンナをあらわす数字10(?、根拠は不明のまま? 誰か教えてください) が基底となって曲は構成されている。


1.まずはやってみよう!----わりと易しいものから、しかし奥は深い

2.ワンランク上を----やりがいのある楽しい曲

3.さらに上へ----挑戦

4.普通のに飽き足りない人のために----究曲の迷曲

5.新たな出会い----ピアノ・管との共演!

6.メンバーが集まらない時にも増えたときにも----3人以下の室内楽&5人以上の弦楽合奏曲