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やりがいのある楽しい曲
String Quartet Chapter 2

このページで紹介する作曲家

ドボルザーク スメタナ スーク シベリウス シューベルト フォーレ ボロディン チャイコフスキー ドホナーニ バーバー

このページでは、有名なカルテットを紹介します。
人気のある曲を書いているのは、やはりドボルザークやチャイコフスキー、 シューベルトにボロディンなどみなさまお馴染みのロマン派の作曲家たちです。 いくつか経験したプレーヤーはこれら楽しい名曲にじゃんじゃん取り組んでください。


ドボルザーク , 1841-1904

かの有名な「新世界」を書いた作曲家。シンフォニーもチェロコンチェルトも有名で あるが、ブラームスとともに室内楽の大家でもある。何といってもこの作曲家はメロディが よい。多くのカルテットプレイヤーはメロディの豊かさ故に彼の作品を好むと言えよう。 一般的に有名な曲の多くは後期の作品である。作品番号が90番をこえるころになって 数々の名曲が世に送りだされている。交響曲第8番「イギリス」、第9番「新世界」にチェロコンチェルト、弦楽四重奏曲「アメリカ」にピア ノ五重奏など躍動感があってさらに燃えるような曲想は後期の円熟期のものである。 それまではどちらかというと、弦楽セレナードのような穏やかな田園的な流れるような室内楽が多い。

カルテットを3つほど紹介し ますが、ブラームスと同じくこの人は気に入らないカルテットをいくつか焼き捨てていま す。

String Quartet No 10 in Es Op.51 1789
5/4 vn 2 va 1 vc 1
一楽章は流れるような穏やかなメロディ。 ドウムカ、またはドウムキーと呼ばれるものがドボルザークの作品に はよく出てくるが、これはスラブ地方の歌の形式のことで、 非常に土臭いが魅力ある旋律ばかりである。 この作品にもある。

String Quartet No.12 in F 「アメリカ」 Op.96 1893
4/4 vn 2 va 1 vc 1
1楽章 2楽章
楽しい。
カルテットをやっている喜びを十分に満たしてくれる。
でも某ビオリストは最初しか出番のないことに文句を言う。 チェロはおいしいとこばかり、と思いきやドボルザークの 後期によくある臨時記号の嵐。でも曲のノリとメロディの流れですいすいと。
2楽章のドウムキーも有名。和音の重なりを美しく、強弱に気をつけて!  はいはい、ビオラの人、そんなにつまんない顔をしないで! セコバイの人は ファーストと重なるところ、後を追って旋律を弾くところに 音色に注意を払うのが良いでしょう。
3楽章は落とし穴があって、一拍目をアウフタクトと錯覚してしまい、 アウフタクトから始まってるように聞こえてしまう。 スメタナ弦楽四重奏団のコホウト氏は、この問題に対して 「カルテットのすべて」(音楽之友社)でこう興味深いコメントをしてます。

「この2拍目のアクセントは決して1拍目より大きいという 意味ではない。・・・チェコ語には言葉の最初の音に強いアクセントがあり ・・・1拍目にアクセントは書いて無いが、 チェコ語の言葉からくる強いアクセントを感じなくてはいけない。 1拍目だけでなく2拍目にもアクセントがあるという意味である。」

よって、やはり1拍目は1拍目として、しっかり弾かなくてはいけないようです。 でも、分かっちゃいるが、どうしても、アウフタクトになって しまう場合。 1拍目をアップとボーイングが印刷されている楽譜がありますが、 ダウンボウにして練習してみてはいかがでしょうか。
そして、終楽章はギャロップ。
軽いノリで一気にじゃんじゃんいっちゃいましょう。 最初の伴奏は4小節ははっきり弾いてテンポを作ったら、 あとはファーストの旋律を上手く導いてあげましょう。 練習番号7番の後に出てくる2分音符のピアニッシモの連続は、 テンポが停滞しないようにしたいです。

String Quartet No 14 in As Op.105 1849
5/5 vn 2 va 1 vc 1
やってみたけど、悪くはないが、ちょっと難しい。スタイルが複雑で、ちょっとあくが ある感じ。でも、ドボルザークらしい魅力 はあるので、アメリカをやって他のもやってみ ようというときなどにどうぞ。

カルテットのほかには、ピアノトリオの3番、4番「ドウムキー」がいかにもドボル ザー クといった熱い曲です。僕は3番の方が土臭くて好きかも。 また、ピアノクインテットはぜひとも一度はやりたい逸品(逸曲)。 -> see chapter 5.
また、チョロの人が寝坊して遅れてくるといったときにトリオはいかがでしょう。 1Vn,2Vn,Vaといった構成の素晴らしい曲があります。 チェロがいなくてもこんな楽しく合奏ができるのかと、遅れてきたチェリストはち ょっと寂しくなっちゃいます。-> see chapter 6.

ここでチェコの国民楽派を代表する二人、スメタナとスークを載せておきます。


スメタナ Snetana, 1824-1884

String Quartet No.1 in e. 「我が生涯より」 1876
5/4 vn 2 va 1 vc 1 1楽章 2楽章 3楽章

String Quartet No.2 in d
5/5 vn 2 va 1 vc 1

1番には、 1楽章の冒頭に非常に強烈なインパクトを与えるビオラのソロがある。 合奏自体はそんなに難しくないが、テクニック的に 4楽章の速いパッセージが非常に難しい。
この曲で最も素晴らしいのは3楽章のラルゴである。
テーマは「初恋」の思い出で、甘美なメロディ が素晴らしい。思わず目を閉じてひたれる。何回でも弾きたくなる・・・ 「またチェロはおいしい旋律ばかり!」とみんなに言われてしまうだろう!
終楽章の終わりにバイオリンのつんざくようなキイーという音があるが、 これは作曲者の耳疾の耳鳴りを表している。


スーク Suk,Josef 1784-1935

この人はドボルザークの娘の夫。

String Quartet No.1 in B Op.11 1896. rev.1915
4/4 vn 2 va 1 vc 1

ドボルザークに似ているがもう少し上品である。見事 なフィナーレもありアマチュア挑戦可能な楽しい曲である。

String Quartet No.2 Op.31 1911
4/5 vn 2 va 1 vc 1

この曲は聞いたことはないが「チェコのコラールによる瞑想曲」というタイトルがつい いている。全体的にくらい曲、技術的にはそんなに難しくはないと書いてあった。


ところで、チェコの音楽ではないのですが、12音技法の創始者のシェーンベルクがじつ に明るくて軽快な曲を書いていました。

シェーンベルク Schonberg, Arnold , 1784-1951

String Quartet in D 習作
4/4 vn 2 va 1 vc 1

「カルテットの楽しみ」にものっていない掘り出し物なのですが、実を言うと我々の ビオリストが発掘してきたもので、習作に当たるらしく、曲のデー タはつかめていないが楽譜は売られている。
シェーンベルクというと「浄夜」をイメージ するかと思いますが、この曲はどっこいベートーベンや ドボルザークのようなボヘミアンを想わせるような 雰囲気がある。サラリーマンをやめて音楽の道を目指して勉強を はじめた頃の作品出でブラームス、ドボルザークの影響を受けている。

#それにしても、ビオリストというのはいろんな曲を探してくる (この曲もわがカルテットのVaがもってきた!)。 どこかにビオラのおいしい曲はないかと常に探し回って、 ついにはライブラリアンになるという傾向があるらしい。 この曲は明るくてそこそこ楽しめる、そしてほとんど知られてない。 お薦めの掘り出し物です。

String Quartet No.1 in d Op.7 1905
vn 2 va 1 vc 1
まだ完全に調性に基づいて作曲されている。
ソナタ形式であるが、単一楽章でスケルツォとロンドも含む 従来の形式が押し込められたようなもの。この曲はChapter4あたりで取り上げるべき 曲です。

なお、二番からは12音技法がもちいられ、しかも独唱が入る。


シベリウス Sibekius,Jean ,1865-1957

作曲家についてのリンク:
Portrait of Jean Sibelius

北欧を代表する作曲家シベリウスもカルテットをかいています。

String Quartet 'Voice intimae' in d 1909
5/6 vn 2 va 1 vc 1
「親愛なる声」という名が付いているものですが、 あまり弾いていて喜びをみいだすのは難しい。 盛り上がりや華やかさには欠ける感じ。

String Quartet No.2 in B
5/5 vn 2 va 1 vc 1
これもカルテットの楽しみには載っていないのですが、こっちのほうがいい曲だと思い ます。習作期のもので変ロ長調の楽しい作品。
この3楽章は私が探していたもの!以前、弦楽アンサンブルの演奏をラジオで聞いたときに、 えらい印象に残っていたものの、何だったんだろうと悩んでいた曲。 たしかシベリウスだったような、、、とは思っていたものの、作品番号も付いているカルテットだったとは!  シベリウスが敬愛していたチャイコフスキィの「フィレンツェ・・・」や弦セレを思わせるような所もある。 有名な某二短調よりはずっと、楽しく聞いていても面白いと思うのですが。

あと1888年の変ホ長調のがいい。 シベリウスにはピアノ3重奏曲ハ長調「ロヴィサ・トリオ」(1885)、 ピアノ五重奏ト短調(1890)なるものもある。いずれもそこそこ魅力ある。本人がバイオリンを弾き、 いずれも姉(ピアノ)弟(チェロ)や友人と楽しむためだったり、勉強のためにそんなノリで 書いたので古典的。


フォーレ Faure, Gabriel 1845-1924

このページを見ていただいた方からのご推薦です!

String Quartet in e Op.121 1924
4/5 vn 2 va 1 vc 1
フォーレは、最後の作品としてホ短調の3楽章の弦楽四重奏曲を残しました。 彼の室内楽ではめずらしくピアノの無い作品。(以下は紹介者から引用です。 どうもありがとうございます
1楽章の未成部分は弟子のデュカスが手を入れた、と記憶しています。 ラベルもドビュッシーも19世紀中にカルテットをものしてますが、 その師であることを思うと、ちょっと意外ですね。 「田舎の日曜日」というフランス映画にもちょっと顔を出しています。 曲は一貫して上品な仕上がりですが、情熱が迸るところもあり(2楽章)、 3楽章のクライマックスは最高のカタルシスをプレイヤーに約束します。 個人的には、抽象と具象の絶妙な融合であり、 作曲家が、求めていた境地に至った様を示しているように思われます。 演奏上の注意としては、 (でも私たちは完成には遠く及びませんでしたが) ハーモニーのわかりづらい箇所は全体的視野から見ると良い、ということと、 曲に素直に弾いていくのが大切なのではないか、ということ。 素敵なメロディがたくさん出てきますので、 歌うように弾くといいのではないでしょうか。

○詳しくはこちら
フォーレの部屋 フォーレに関する書籍、曲目の紹介、演奏の体験談。

シューベルト Schubert, Franz Peter, 1797-1828

String Quartet No.13 in a 「ロザムンデ」 Op.29 1824
4/4 vn 2 va 1 vc 1

全体的に響きもよく、しっとりとしている。
アンダンテは有名な旋律、同じ名前の付随音 楽の間奏曲のメロディ、絶品である。僕の個人的な好みとして次の14番もだけどしっとり していて落ちついているこちらもいい。じっくりと取り組むといいと思います。

String Quartet No.14 in d, 「死と乙女」 Op.posth. 1826
5/5 vn 2 va 1 vc 1
1楽章
晩年の作品。
この曲もすべてのカルテットのなかでも有名であり、冒頭の厳粛で劇的な 始まりに魅せられるのである。技術的にも難しい。
この名曲のアンダンテの変奏曲も有名で、作曲者の歌曲 「死と乙女」をテーマにしている。 終楽章はしなやかな右手の技術が必要。

以上の2曲は、シューベルトの素晴らしい歌の極みの名曲であるが、やはり難しい、 しかも疲れる。

String Quartet in c Op.posth. 1820
5/4 vn 2 va 1 vc 1

1楽章しかない。
「断章」ともタイトルがつけられているが、 非常にすばらしい作品。2楽章以降途中で放棄された理由については「未完成」 同様不明だが、作曲家の苦悩が感じられるものの充実感のある曲。

String Quartet in D Op.posth. 2/2 1813
あまり演奏されないが、メロディーの美しさがよい。

String Quartet in Es Op.125-1 2/2 1813
非常に楽しめる、と書いてあった。コンパクトであるがシューベルトの天分が十分に出 ている作品。

String Quartet in B Op.169 3/2  1814
広く知られている作品。技術的にも易しい。

String Quartet in g Op.posth. 3/2  1815
終楽章がジプシー風の強い印象 を受ける非常に良い作品。

 * * * * * * * 
さらにシューベルトには管楽器とコントラバスを含むオクテット、あと「ます」 クインテットが有名です。 -> see Chapter 5


ボロディン Borodin, 1833-1887

日曜音楽家のボロディンがなんともおいしい曲を書いています。

String Quartet No.2 in D 1880
3/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

1楽章と3楽章がいい。技術的にも難しくない。
しかし、おいしいメロディはストバイとチェロばかりで、 残りのふたりにはフラストレーションがたまるばかり。 しかも何回も同じメロディがつづくのであきてくる。 3楽章は豊かな美しい旋律。 この楽章は弦楽合奏にも編曲されているが、この楽章だけでもいい。 終楽章は僕には何のことだか分からない。これで終楽章がかっこよければ。


チャイコフスキー Tschaikowsky, 1840-1893

作曲家についてのリンク:
小さなチャイコフスキー館

有名なアンダンテカンタービレはカルテット1番のアンダンテである。

String Quartet No.1 in D Op.11 1871
4/4 vn 2 va 1 vc 1
ロシアの民俗音楽を多く取り入れたもの。メロディーが豊富。有名な アンダンテカンタービレだけをとりだしてもいいが、全部やっても面白い。 チャイコフスキーというと臨時記号の多さと大げさな音量表示が目につくが、これ はわりとあっさりしているとおもう。次の3番に比べれば。

String Quartet No.3 in es Op.30 1876
5/5 vn 2 va 1 vc 1
3曲のカルテットがあるが、一番かっこよい曲である。しかし、譜面を見ると思わず遠慮したくなるフラットの多さ、複雑さ。譜面が臨時記号で黒い のである。難しそう。

* * * * * * * 
チャイコフスキーもコテコテのピアノトリオを書いてます。巨匠 ルービンシュタインの 死の追悼でかかれたもので、これは技術的に非常に難しい。弦楽六重奏の「フィレンツェ の思い出」というのもかっこいいですね。 -> see chapter 5 or 6


ドホナーニ, Dohnanyi, Ernst von ,1877-1960

3つのカルテットがあるそうです。特に2番が、アマチュアに喜ばれる もっとも素晴らしい作品と言える、と評されてました。
String Quartet No.2 in Des Op.15 1914
4/3 vn 2 va 1 vc 1
アレグロ-スケルツォ風プレスト-モルトアダージョ。
全体を通じて旋律が美しく印象的で、誠実な作品だそうです。

String Quartet No 3 in a Op.33 1928?
4/4 vn 2 va 1 vc 1
よりハンガリー色調が濃くなっている。
情熱的で長いアレグロアジタート・アパショナート、その中に 恋歌とも言うべき甘いメロディーがあるそうです。 練習すれば十分可能。


バーバー、S.Barber, 1910-1981

String Quartet Op.11
5/4 vn 2 va 1 vc 1
映画「プラトーン」でアダージョ楽章が用いられていることから、聞いたことの あるかたも多いのでは。 弦楽合奏でこの感傷的な2楽章アダージョを演奏すると非常に効果があります。 ただ、四分音符がズラズラ並び、全音符が長いので、 きちんと数えてカウントを気を付けないと、私は何処? 状態になってしまいます。 バーバーは、アメリカの作曲家で、当時はやりの前衛音楽に流されることなく 美しい曲を多く残し、チェロ協奏曲は難しいながらも佳曲です。
1.まずはやってみよう!----わりと易しいものから、しかし奥は深い

2.ワンランク上を----やりがいのある楽しい曲

3.さらに上へ----挑戦

4.普通のに飽き足りない人のために----究曲の迷曲

5.新たな出会い----ピアノ・管との共演!

6.メンバーが集まらない時にも増えたときにも----3人以下の室内楽&5人以上の弦楽合奏曲