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さらに上へ、挑戦
String Quartet Chapter 3

このページで紹介する作曲家: ベートーベン(中期)  ブラームス シューマン ショスタコービチ プロコフィエフ ドビュッシー ラヴェル

難しいですがぜひチャレンジを!
これらは作曲された経緯からしてプロフェッショナルなプレイヤーを意識して書かれている。 ベートーベンの中期や、ドビュッシー、ラヴェルはカルテットの醍醐味。 玄人好みのシューマンやブラームスもかなり手ごたえのある曲。 近代のショスタコやプロコもマニアにはたまらない作品です。 しかし、アマチュアでも"まだ"挑戦可能な領域ですね。


再びベートーベン

中期の作品をご紹介します。この辺はきちんと弾いたことがない曲も 多い(ちょっと遊びでやった程度が多い)のですが、 参考書や曲を聴いた感じなどで書きます。いつの日か真っ向勝負を挑みたい!!

String Quartet No 7 in F "ラズモフスキー第一番" Op.59-1 1804-06
5/5 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 8 in e "ラズモフスキー第二番" Op.59-2 1804-06
5/5 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 9 in C  "ラズモフスキー第三番" Op.59-3 1804-06
5/5 vn 2 va 1 vc 1

以上の3曲は「ラズモフスキ−○番」と呼ばれているが、その昔そういう名の伯爵様が いて、その人に捧げられた。この伯爵は大変な音楽好きで私的にカルテットを持っていて 自らも第2バイオリンを弾き、第1には名手シュパツィヒがやっていた。この頃になると 、カルテットも家族的な楽しみから本当の室内楽としての芸術的な様相を持つようになっ た。また、プロフェッショナルなカルテットを多く生み、今日のような「カルテットのコ ンサート」もこの頃になって登場した。よってこれらのころの作品はそのような鍛え抜か れたプロのために書かれた作品で、やはり難しい。この3曲もアンサンブル的に難しい。 3番がよく演奏されるが、他の二曲もかっこよい。1番はチェロの美しいメロディに始まる。 2番は始めからアンサンブルが難しい。休みをしっかり数えること。 3番のフィナーレは難しいアレグロフーガの大運動会!? 自爆するので決して走らないように 注意。かなり熱狂的な盛り上がりがたまりません!! でも、つっ走りすぎて途中で倒れないように。「指が回りません。。。」

String Quartet No 10 in Es "ハープ" Op.74 1809
5/5 vn 2 va 1 vc 1

1楽章のピチカートが多くそのような愛称が付いている。全体的に聴きやすく素直に楽しそう。 これらのなかではわりと克服しやすいと書いてあった。 ただし1楽章のチェロの音階が難しい・・・

String Quartet No 11 in f Op.95 1810
5/5 vn 2 va 1 vc 1

ベートーベン自身がこの曲を名前の通り厳粛な(セリオーソ=シリアスな)カルテット といっているらしい。1楽章の前奏のない強い動機がインパクトがある。 2楽章のアレグロノントロッポがよい。 曲は短めであるが非常に中身が濃い。 ぜひともやってみたい一曲。

ベートーベンに共通して 言えると思うのは(ハイドンやモーツァルトについてもいえるのでしょうか)、 他の作曲家と違ったある種の難しさがあるような気がします。それは、 普通は練習をやればやるほど形になっていき、ある程度 の「完成」が見られるはずなのですが、ベートーベンの場合は、練習をいくらやっても 完璧だ!、という実感が得られず、いろんな課題が生じてくる感じがして終わりがない ような気がします。


ブラームス Brahms, Johannes, 1833-1897

 作曲家についてのリンク: Brahminen!! ブラームス派!!

たくさんの美しい弦楽器の曲をブラームスは書いている。 カルテットについては聴いたことしかないが、経験を積めば克服可能ならしい。 きれいによく 響くように弾くのが難しいようである。 次に挙げるように3曲かいているが、随所でビオ ラが目立つ。

String Quartet No 1 in c Op.51-1 1873
4/4 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 2 in a Op.51-2 1873
5/5 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 3 in B Op.67 1876
5/5 vn 2 va 1 vc 1
1番などはアマチュアでも充分演奏でき美しい曲と、我が参考書には書かれているけど、 彼のカルテットはどうもうまく聞かせるのはむずかしいのでは。
・1番は、情熱的な豊かな響きがする良いもの。ブラームスらしい、かつブラームス の独壇場ともいえる作品。しかし、旋律ラインが分かりづらい。 演奏するほうが曲をしっかり理解してい無いと。。。 4楽章のアレグロで1楽章の動機をベースにしたもので 統一感が出されている。シンフォニー1番と同様、この曲ができるまでに 長年かけられている。調性も同じくハ単調。難産の作。
・2番は、より内向的であって、あまりはっきりと ものを言わない感じ。しかし、2楽章のチェロがおいしい。 ・3番は難しい。しかし最も優れた四重奏に数えられるのでは。 全体的にフォルテッシモがなく派手さは無いが、じわーっとくる・・・ぬる湯な温泉(?)。 2楽章は暖かく充実した曲想がたまらない。3楽章はビオラ・コンチェルト。完全にビオラの世界です。 問題は4楽章。バリエーションが大苦戦。フラットが多すぎる。

カルテットもいいですが、他の室内楽のピアノ五重奏や クラリネット五重奏、二つの6重奏も室内楽の宝とも言える名曲です。ブラームスでしたらこちら をお薦めします。


シューマン Schumann, Robert ,1810-1856

シューマンは旋律が大変美しいが、弦楽器の事情などまるで知らないかのような事ばかり 書く。3曲あるが、2番3番などは非常にいいのですが、やっぱり素人には弾き こなせないようなパッセージが多い。苦労しても報われなさそうな気がします。

String Quartet No 1 in a Op.41-1 1849
4/3 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 2 in F Op.41-2 1849
5/4 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 3 in A Op.41-3 1849
4/4 vn 2 va 1 vc 1


さて、ドイツのロマン派を離れましてロシアの近現代の天才、 ショスタコーヴィチとプロ コフィエフをとりあげておきます。

ショスタコービチ Shostakovich,Dimitry ,1906-1975

作曲家についてのリンク: Dmitri Dmitriyevich Shostakovich

ショスタコというと、重苦しさや暗さをすぐ連想して遠ざけられがちですが、 十分弾けるのも多くあります。非常に難解な難曲もありますが、譜面づらは結構 シンプルで、変にテンポを揺らしたりすることも少なく、インテンポを中心にした かっちりした構成の曲が多い のです。アンサンブルもそんなに難しくないものもありますし、一度やってみる価値はあ ると思います。ただ、独特の跳躍の音程が難しく内容が深刻なものが多いのは確かです。 その中でも明るいものや弾けそうな曲を取り上げてみました。
生涯にわたる15のカルテッ トを書き、ベートーヴェンとともにカルテット作曲家の大家と言えましょう。 カルテット以外にも、ピアノクインテット、トリオ、弦楽八重奏もあります。 ( -> see chapter 5,6)

String Quartet No 1 in C Op.49 1938
4/5 vn 2 va 1 vc 1

有名な第5交響曲のあとの、田園的存在。全体的に明るい。

String Quartet No 5 in B Op.92 1952
5/5 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
3楽章形式で切れ目がなく長い。しかし1番表情豊かなもの。1楽章は 何ともひねくれモノのような変わった旋律だが、割と明るい感じ。第二主題は明るくセコバイが弾く。 3楽章は暗い。

String Quartet No 6 in G Op.101 1956
4/5 vn 2 va 1 vc 1

String Quartet No 7 in fis Op.108 1960
5/5 vn 2 va 1 vc 1
1楽章
 非常に短く、技術的に易しいほう。なんかこの辺の作品の主題は皮肉というか、 「ユーモア」といった思わずふきだしたくなる旋律が多い。

7番は全曲3楽章通しても10分ちょっとの短い曲だが、非常に トリッキーな個所も多く旋律もユニークで効果的に作られている。 1楽章の出だしはファミコンかなにかの落ちものゲームのような旋律。
チェロからはじまる第二主題は酔っ払い千鳥足。 「ヒャーン」というセコバイのアクセントもおもしろい。 2楽章はセコバイのエチュードに始まる(この曲におけるセコバイは 効果音的な役割が多い)。ビオラとチェロによるロールプレーイングゲームの ダンジョン(洞窟迷路)の音楽みたいな旋律があったりする。 3楽章は速い16分音符の絡み合い。後半のワルツは変拍子で裏拍の伴奏の アンサンブルが難しい。この曲は始めの妻ニーナにささげられているのだが、 この曲を聴く感じからすると、どんな奥さんだったのだろう、、、と首を かしげてしまう。

String Quartet No 8 in c Op.110 1960
5/4 vn 2 va 1 vc 1 2楽章
 時代背景が顕著に現れたのが、このあたりの8番から10番の激しい作品であろう。
この第8番は「ファシズムと戦争の犠牲者をいたむ」と記され、わずか3日で書き上げられた。 おそらく怖いと感じるだろう。彼の名前のイニシャルが主要な動機になっている。 弦楽合奏版の演奏もあり圧巻である。
2楽章はアレグロモルト。全部四分音符でかかれているが、o=120であり、 とても速く激しい。3楽章はおもしろいメヌエット、というか、夜の仮面舞踏会 のような不気味な曲。5楽章で1楽章の楽想があらわれ静かに終わる。 ちょっと手をつけてみたが、やっぱり2楽章が・・・

String Quartet No 9 in Es Op.117 1964
5/5 vn 2 va 1 vc 1 チェロのカデンツァ

シンフォニックな作品。5楽章あるがこれも連続している。激しさは 相変わらず。8番よりはずっと聴きやすい。5楽章に同じ9番の交響曲に あるファゴットのソロのような、チェロの長大なカデンツァがある。 めずらしく激しく強奏で全体を締めくくる。

String Quartet No 10 in As Op.118 1964
4/4 vn 2 va 1 vc 1 3楽章
8番より少し平和的な曲。両端は循環式で穏やかだが、 二楽章はオールフォルテッシモの激しいもの。
学生のころ室内楽の演奏会で取り上げたのですが、実を言うとこの2楽章は、 非常に演奏効果があり、 しかもそんなに難しくないもの。1・3楽章はチェロが大きく活躍。だけど、4楽章が非 常に難しい。投げ出したくなる重音と高音。
思えば、うちのカルテットのストバイの太郎ちゃんは「きれいな」曲だけが すきだったのですが、そんな彼も、熱心なヴィオリストの「教育(?)」のおかげで、 いつしかこんな激しい曲も弾いてくれるようになりました。 つくづく、人は付き合う人によって変わるものだと感じ入る次第です。

この他,後期にまだありますが、さらに内容的にも難しく理解できない。 ここまででしょう。


プロコフィエフ Prokofiev,Sergey Sergeyevich, 1891-1953

作曲家についてのリンク:
プロコフィエフ について勉強中
Rossik's Prokofiev Page

  二曲ある。やはりこの作曲家も癖があり人によって好き嫌いがわかれるが、 非常にかっこいいカルテットを残している。

String Quartet No 1 1930
5/5 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No 2 1932
6/6 vn 2 va 1 vc 1
どちらかと言えば、2番のほうがよい。難しいが、ロシア臭くおもしろい。 学生の頃、後輩のカルテットメンバーが室内楽の発表会で弾いていたが かなり印象の残る曲でした。

またまたお国は変わりまして、おフランスの作曲家です。 サンサーンス、オネゲル、フランセといった人もいますが、 まずは印象派の代表作品を取り上げたいと思います。

ドビュッシー Debussy,Claude, 1862-1918

作曲家についてのリンク: ドビュッシーのオマージュ

String Quartet in g Op.10, 1893
6/6 vn 2 va 1 vc 1 1楽章, 3楽章
このカルテットを現代音楽のなかで重要な位置に置く研究者は多い。
彼のは一曲しかないがその独特の音色に大変ひかれる。 なめらかに流れるような、 和音一つ一つに細心の注意が必要。
1楽章の最初の動機、 とくにその音の響きが非常にインパクトがある。ほかのどの作曲家にもない。 1拍目のテヌートはしっかりと、短くならないように。 すぐ後13小節から出てくる16分音符の波のようなクレッシェンドと デクレッシェンドですが、ココでフレーズに沿ってテンポを クレッシェンドとともに少し前に持っていくようにして、その分 デクレッシェンドで戻す(落ちる)というようにすると、 それにのる旋律が浮き出てきます。(あくまでも自然に)
2楽章のビオラは単調な動機ですが、緩むことのないようにしましょう。 2拍目のテヌートも音のテンションを保った方が良い。
3楽章のメロディがとくに美しい。また強弱にもとくに気を配り、よくスコアーを 勉強しておかなければならない。技術的に難しいが、やってみたい一作品である。 4楽章は難解。ドビュッシー全体に多い伴奏のうねうねしたやつは、 右手が難しいですが、あまり神経質に完璧を目指すよりは雰囲気を 壊さないようにそれとなくやるほうが上手くいきそうです。


ラベル Ravel, Maurice, 1875-1937

String Quartet in F 1902
6/6 vn 2 va 1 vc 1 1楽章, 4楽章
CDではドビュッシーのカルテットとよくカップリングされる。
1楽章は穏やかな幻想的な楽章。そんなに難しくない。 チェロはF-durの音階、5度の重音の音程を練習すること。 24小節目の前のディミヌエンドではテンポを少し落として、 24小節目からは少しテンポを早めにするとちょっとカッコイイ。 ピアニッシモでも音量は小さすぎず音色で勝負。
二楽章はピチカートがかっこいいもの。同じ小節でパートによって 3/4と6/8がかかれており、そのアクセントの噛みあわせが大事。「道化師の朝」を 思わせる。アクセントを強調して派手にやりたい。 二分音符=30の4拍子のバイオリンはビオラを頼りに。この前後の チェロのPizz.は神秘的に演出したい。
3楽章はうねうねと五里霧中といったようなもので聞かせるのが難しそう。
終楽章はアンサンブルが非常に難しい。 並大抵以上の努力が必要でしょう。何が難しいって、 5/8,3/4,5/4 と拍子が変わりしかもそれを一拍にとって二つに割ったりと、 いろいろ仕掛けがややこしい、苦労させられました。 5拍子はなれるしかないですね。。。 8分音符単位のメトロノームを使って、ゆっくりのテンポから徐々に早く各自が インテンポで弾けるように、トレーニングが必要でしょう。 縦の線がそろうようになったら、強弱とクレッシェンド、アクセントなど をはっきりと引き分けられるようにすると良いでしょう。


1.まずはやってみよう!----わりと易しいものから、しかし奥は深い

2.ワンランク上を----やりがいのある楽しい曲

3.さらに上へ----挑戦

4.普通のに飽き足りない人のために----究曲の迷曲

5.新たな出会い----ピアノ・管との共演!

6.メンバーが集まらない時にも増えたときにも----3人以下の室内楽&5人以上の弦楽合奏曲