Copyright by M.Yokoyama

1.まずはやってみよう!----わりと易しいものから、しかし奥は深い。

Chapter 1

このページで紹介する作曲家

ハイドンボッケリーニシュターミッツディタースドルフメンデルスゾーンモーツァルトベートーベン


最初の一曲

カルテットで最初にどの曲を取り上げるか?
プロ・アマとも意見を聞く感じではやはりウィーン古典派の巨匠3人、 モーツァルト、ハイドン、ベートーベンが挙がります。
もちろん有名な「アメリカ」や「死と乙女」から取りかかっても良いですが、 その場合でも初めて顔をあわせるメンバーでしたらこの章で挙げる古典を一度は 合わせてみてはいかがでしょうか。

でも、ハイドンには80曲以上も、モーツァルトには20曲以上もあり、 ベートーベンだって16曲ですし、しかも中期以降はかなり上級レベル! その中から1曲、どれを選ぶか。難しい選択ですが・・・

次の候補を挙げてみましたのでレベルに応じて選んでみてはいかがでしょうか。

Mozart, Divertimento No.1 K136 in D
2/1 vn 2 va 1 vc 1 k136 1楽章

3曲のディベルティメントはいずれも可愛らしい簡単な曲ですが、最もポピュラーなのは このニ長調のK.136。
ファーストバイオリンが基本的にメロディーを弾きます。 セカンドバイオリンが所々に見え隠れするように出てきますが、多くはファーストの下で ハーモニーをやったり、ビオラやチェロのように伴奏をしたりします。 ビオラ、チェロはほぼ8分音符の伴奏です。
ファースト以外は楽器を始めて間もない初級者(2,3年目?!)でも挑戦可能でしょう。 大人から始めたレッスン教室とかでも取り上げていました。

Hydon, String Quartet No.41, in d 「五度」 Op.76-2 1797
3/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

それなりに経験者のメンバーでどうぞ。
演奏会でも練習でもやりがいのある曲。各パートに均等に 出番がまわってくるので誰かが飽きるということはないです。 4楽章は活力あり展開の面白さありで、情熱的な盛り上がりが いかにもハイドンらしい!
なお、この頃(Op76)の他の作品の『皇帝』や『日の出』をやってみても良い。

Mozart, String Quartet in G K387 1782
3/4 vn 2 va 1 vc 1

こちらも経験者チームの選択肢です。モーツァルトが好きな人であれば、まずはこれでしょう。
『春』というタイトルがついたりもする。ハイドンセットと呼ばれる6つの作品群の 最初の曲で、明るくそして流れるような半音階進行が全体を優雅にまとめてます。 ハーモニーを合わせるのが難しいところや、裏拍にあたる表紙にアクセントがついたりと 正確に演奏するには細心の注意が必要。

Beethoven, String Quartet No.4 in c Op.18-4
4/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

ベートーベンが好きな人でしたら、まずは初期のポピュラー曲の4番をどうぞ。
熱ぼったい短調のオープニングが印象的であり、前奏なしにいきなりテーマが現れるの所が この曲が他と変わっているところ。 難易度的にはややバイオリンが高レベルか。 ベートーベンは何の変哲もなさそうな音階や分散和音が一番難しかったりします。
また1楽章の第2主題のチェロは高音&跳躍が難所です。


・・・・・・
これらは初めの一曲として取り上げて、どれも損はないかと思います。 難しいところもあり、充実した内容であり、練習としても演奏会用としても 文句なしです!
以降、各作曲家別にこのランクの曲を挙げていきます。

ハイドン Haydn, 1732-1809

全部で83曲も弦楽四重奏曲を書いています。
すべてが名曲というわけではないですが、またカルテットの宝とも言うべき作品もたく さんあります。シンプルであり形式的にも完成されたものも多く、 アンサンブルや音程の乱れがすぐにばれてしまいやすいので 大変勉強になります。 まずは以下にあげる曲から練習を始めるといいでしょう。

String Quartet No.68 in F 「セレナード」 Op3-5, 1755?
2/2 vn 2 va 1 vc 1

誰でも一度は聞いた事のある有名なセレナードを含む傑作。全体を通しても易しいのでは ないか。セレナードはアンコールもしくはイベントやお店で弾く営業的演奏にどうぞ。

String Quartet No.72 in C Op33-3「鳥」 Op.33-3 1781
3/2 vn 2 va 1 vc 1

個人的に4楽章(ロンドプレスト)が楽しくて好きなのですが、そんなに速 くやらなくてもいいと思います。バイオリンのデュエットがあります。 2羽の雀の様にきれいに弾くにはいい音色と練習 が必要です。僕は可愛らしい曲なので気に入ってます。

String Quartet No.35 in D 「ひばり」 Op64-5, 1790
3/2 vn 2 va 1 vc 1

優雅で美しいバイオリンの旋律で有名です。ただ、伴奏側がちょっと単調かも。 ファーストバイオリンだけがやたら目立つので技量的にストバイに傾く。 やや難しいところもあります。 この時代はストバイが旋律ばかりを弾きさながら コンチェルトっぽいカルテット・ブリリアントというのが多い。

String Quartet No.41, in d 「五度」 Op.76-2 1797
3/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

アンダンテが魅力。4楽章のロンドも中身のある楽章。 一楽章の最初のモチーフの5度の進行からこの名がついた。 演奏会でも練習でも効果のある曲。各パートに均等に 出番がまわってくるので誰かが飽きるということはない。 五度で移行した2つ目の音の長さをしっかり保って 次に弾くパートへ音楽をつなげたい。 ハーモニーも豊かに非常に良く響くようにかかれていて、 盛り上がりもあり、熱くさせてくれる。 また、この頃Op76の作品は名曲揃い。

String Quartet No.42 in C 「皇帝」 Op76-3, 1797
5/4 vn 2 va 1 vc 1 2楽章

オーストリア国歌。この2楽章の変奏曲は素晴らしい。 しかしこの曲はなかなか難しい。とくに1楽章では3 対1の16分音譜が続きしなやかな右手の技術がいる。

String Quartet No.49 in B Op76-4「日の出」 Op.76-4 1797
3/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

何と輝かしい曲でしょうか。非常に美しい。出だしのバイオリンが ほんとに太陽が海の向こうからすがすがしく昇ってくる感じをかもし出して良い。 初めて真面目に取り組んだ曲なので思い入 れが大きい。しかもそれほど難しくないし、良い響きがするおすすめの逸品。

何せよハイドンのカルテットは膨大な量なので、あとは「カルテットの楽しみ」でおすすめ になっていたのを挙げておきます。

String Quartet No.63 in B Op.2-6 1755?
2/2 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No.16 in d Op.9-4 1768
3/3 vn 2 va 1 vc 1

強く推薦されてい た。メランコリックな印象の真面目な作品で非常に美しいらしい。

String Quartet No.6 in D Op.17-6 1797
3/3 vn 2 va 1 vc 1

やりがいのある作品とされている。終楽章が傑作。

String Quartet No.46 in D Op.20-4 1772
3/3 vn 2 va 1 vc 1

愛されるべき美しい曲。一楽章は水晶のような透明感を。緩徐楽章はそれぞれの パート に出番あり。メヌエットと終楽章が売り物。

String Quartet No.34 in G Op.64-4 1790
3/2 vn 2 va 1 vc 1

これもまた大変素晴らしいとある。この著者にとっては何でも素晴らしくなってしまう のか。主題の豊かさがいいそうだ。

String Quartet No.50, in D Op.76-5 1797
3/3 vn 2 va 1 vc 1

有名なラルゴ付き。 さして難しくないといっていいる。 他にもいっぱいあったが何せよ多い。載せ忘れてるの がありそうだ。いろいろ調べていて 自分もやりたくなってくるのがいっぱい出てきた。 是非、ペータースのハイドンのカルテット集2巻を手に入れることをお勧めします。


ボッケリーニ Boccherini, 1743-1805

この人も数えきれないほど書いている。この人は有名なチェロ協奏曲を書いたし、 この人自身チェリストであったようですが、果 してチェロパートは満足のいくものであるのか。 参考文献に紹介しているものをいくつかだけのせますが、僕はよく知らない・・・ (何とも無責任)。

String Quartet in c Op.1-1 1761
1/1 vn 2 va 1 vc 1

シンフォニアと称すらしい。気軽に弾ける もの。

String Quartet in g Op33-5 3/2 1780

String Quartet in g Op.33-5 1780
3/2 vn 2 va 1 vc 1

後半が情熱的な 1楽章。可愛らしいアンダンテ。古風なメヌエット。よさそう。

String Quartet in c Op41 3/2 ?

String Quartet in c Op.41
3/2 vn 2 va 1 vc 1

非常に満足するらしい。


シュターミッツ Stamitz Carl(1745-1801)

String Quartet No.2 in G
2/2 vn 2 va 1 vc 1
結構おすすめできる。簡単でよい。ディベルティメントっぽい。 珍しくビオラとチェロにもおいしい出番が来る。楽しくできてやさしい。

ディッタースドルフ, dittersdorf, Carl Ditters von 1739-1799

String Quartet No.6 in Es
3/2 vn 2 va 1 vc 1
これも参考書からの引用です。以前組んでいたメンバーの一人の先生が、 カルテットの練習にどうぞ、と薦めていたそうです。独創性もあって 明るい曲が多いとか。6曲ありますが、その中でも6番が 良いと紹介されてました。野性的でハンガリー風のバイオリンソロ があったり、美しいところがあったりするそうです。

モーツァルト 1756-1791

僕はハイドンセットが大変お気に入りです。次の6曲のことをいいます。

String Quartet in G K387 1782
3/4 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet in d K421 1783
3/4 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
String Quartet in Es K428 1783
3/4 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet in B「狩り」 K458 1784
3/4 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
String Quartet in A K464 1785
3/3 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet in C「不協和音」 K465 1785
3/4 vn 2 va 1 vc 1 1楽章

どれも素晴らしいと思うのですが、モーツァルトを弾くにはファーストバイオリンが上手 であることと、全体で柔らかい美しい溶け合うような音色が出せなくてはいけません。 アンサンブル的にも結構難しいところが多い。人前で演奏するときは よほどの修行やカルテットの技量を考慮して聞き手をがっかりさせないようにしたいもの です。でも、勉強になると思いますので果敢に挑戦してください。

以上のなかでおすすめ は、K421のd-mol。六曲中唯一の短調の曲で美しい。3楽章のメヌエットは大変かっこい い。終楽章のシチリアーノ風の変奏曲もかっこいい。セコバイが見所(聴き所)。
「狩り」も大変楽しいカルテットです。 これも大変良い。軽やかに。でも、意外と弾きにくい、さまになりにくい 箇所もありました。
「不協和音」というと奇麗じゃないイメージがありますが、ところが なかなか美しい明るい曲です。1楽章の序奏にあることから、 この名前がつきましたが、本筋は当然美しいかぎりの名曲。 主題はハ長調の華やかでも落ち着きのある旋律。 ちょっとおちついたアンダンテもいいですね。4楽章は かろやかに。ちょっと難しい。

・ それと、弾き方の注意なのですが、モーツァルトのフレーズや モチーフの終わりで、例えば、

4/4 |  休 ||

という終わり方をしているときは、ハイドンやベートーベンのように、 「ジャン、ジャン、ジャン!!」と四分音符3つ弾いては良くないと教わりました。
たとえば、、、「ジャン、ポン、ポン」と上品に(!表現が稚拙ですが・・・(~_~; )、 音楽は一つ目の音のコード(たとえばドミナント)で終わらせて、 残りの二つはきれいに添える感じにするそうです。
四分音符が二つの場合も同様です。

* * * * * * *

Eine Kleine Nacht Musik K525 1787
3/3 vn 2 va 1 vc 1 (cb 1 )

ご存じアイネクライネです。これはもう言うことはありませんが、テンポの設定に気を つけてください。誰でも知っている曲ですので音程にも強弱にも気をつけてください。二 楽章の後半のトリルが出てくるところがちょっと難しい。うまく掛け合いになるように。 終楽章は速すぎないように、自爆します。

Divertimento 1-3 K136-138
2/1 vn 2 va 1 vc 1 k136 1楽章 k137 1楽章 k138 1楽章

3曲とも非常に易しい。ですが、人前で演奏するとき、特に D-dur は よく知られすぎているだけに要注意。上手に弾かなくてはいけません。 なんかのBGMとかでよくやりましたが、一度、繰り返しの打合せが不十分で、 本番中「え?先?リピート?どっち!」なーんて焦ったときがありました。。。 油断禁物。

# 他にも

String Quartet, K575,589,590
4/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
モーツァルトのカルテットにはチェロが活躍するのもあります。 晩年に書かれたものでどれも明るくて透明感のある楽想がよいです。
# モーツァルトには管楽器を交えた名曲が数多く残っています。 クラリネット五重奏曲、フルート、オーボエ四重奏曲など。→see chapter 5.


ベートーヴェン 1770-1827

ベ−ト−ヴェンは易しいものには含まれないように思います。 ですけど、十分練習すればその成果がえられると思いますので、 ぜひ取り組んでみてください。次に挙げる初期のものか らやったらよいのではないでしょうか。

String Quartet No.1 in F Op.18-1
4/2 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No.2 in G Op.18-2
4/3 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No.3 in D Op.18-3
4/3 vn 2 va 1 vc 1 4楽章
String Quartet No.4 in c Op.18-4
4/3 vn 2 va 1 vc 1 1楽章
String Quartet No.5 in A Op.18-5
4/3 vn 2 va 1 vc 1
String Quartet No.6 in F Op.18-6
4/3 vn 2 va 1 vc 1
(いずれも1798-1800作)

初期の作品は6曲あります。ただ、曲についてる番号は 作曲順というわけではありません。中でも、演奏のしやすさ、 旋律の親しみやすさからか、一番よく演奏されるのは 4番じゃないでしょうか。
そのうち1番はわりと易しいのでは...。これは1楽章しかやっ たことがないけど、ただどちらかというと平坦。しっかりと弾きたい。飽きずに真面目に やれる、渋好みの人向き。2番はもっと地味。
3番は非常に明るくて可愛らしいもの。一番最初に書かれたも ので、1楽章はモーツァルトを思い起こさせる。終楽章は軽やかなバイオリンの メロディではじまる。明るくて快活な人どうぞ。
4番、1楽章は若さ溢れる非常にメロディが豊か。派手好きで熱いものが好きな人向 け。ただチェロにやや難しい第二主題のソロが出てくる。2・3楽章はベートーヴェンのシン フォニーを思い起こさせる。終楽章もそんなに難しくなく華やか。 6曲の なかで一番とっつきやすいのでは。
5番、6番はなかなか難しそう。曲の構成もより複雑。しかし、その分充実度も高い。 6番の方がいいと思います。曲想もわかりやすく、1楽章の軽快な主題がいい。 16分音符がすべったりつまったりしないよう、しっかりと弾きたいです。 ベートーベンは転んだら台無しです、走らないように、、。あとは、アダージョ もより魅力的です。

* * * * * * *

ベートーヴェンのカルテットには全部で17曲ありますが、そのうち始め6曲を前期、 7〜9番ラズモフスキーシリーズに始まり、 11番セリオーソまでを中期、それ以降の大フーガを含む一連の作品を後期と 分けられていますが。それぞれペータース版で3巻にわかれて出版され、自分はまだそ の1巻しか触ったことがありません。中期になるとちょっと譜面を見たことがある程度で、 内容的にも技術的にもぐっと難しくなる。十分経験を積んだあとに手を出すのいいの でしょう。しかし素晴らしい曲ばかりである! 後期の作品はベートーヴェンの生涯最後の時 期に書かれた作品。畏敬の念をもって聞き手にまわったほうがいいでしょう。言 葉では言い表せないずっしりじわっとくるものがあります。ぜひ聴いてみてください。

中期以降のベートーベンの続きこちら
あと初期の作品では管楽器を含む七重奏 もお薦めです。 -> see chapter 5


メンデルスゾーン  1809-1847

ベートーベンに学び、それでもってメンデルスゾーンらしい 美しい叙情的で時に激しい感情的な旋律もあって、聞いても やっても満足のできそうな曲が多くあります。
String Quartet No.1 in Es Op.12 1829
3/2 vn 2 va 1 vc 1

6曲のカルテットのうちで最もポピュラー。カンツォネッタのある楽しいメロディに 富む曲。メンデルスゾーンならこれがスタンダードナンバーになる。  

String Quartet No.2 in a Op.13 1827
4/4 vn 2 va 1 vc 1
実際は1番より先に作曲されている。非常に美しく、メンデルスゾーンらしい クドくも流れるような旋律がいっぱいの曲。2楽章が優美。 3楽章は有名なスケルツォ。4楽章は全体的にアンサンブルも複雑で ファーストバイオリンが難しそう。

String Quartet No.6 in f Op.80 1847
4/4 vn 2 va 1 vc 1
これも非常に美しいが、ベートーベンのような力強さがある。 いままでのメンデルスゾーンとは一味違った激しいもの。 2楽章は速くアンサンブルも難しそう。4楽章はシンコペーションを 主題にしたアレグロモルト。最後のクライマックスうがとても かっこいい! チゴイネルワイゼンのような速いぱっセージで 締めくくる、ファーストバイオリンが難しそう。

メンデルスゾーンの室内楽には、若干十いくつのときに書かれた、 弦楽八重奏という素晴らしい華やかな作品がある。 これはカルテットをちょうど2つ合わせた編成で、非常に若々しい。see chapter 6



1.まずはやってみよう!----わりと易しいものから、しかし奥は深い

2.ワンランク上を----やりがいのある楽しい曲

3.さらに上へ----挑戦

4.普通のに飽き足りない人のために----究曲の迷曲

5.新たな出会い----ピアノ・管との共演!

6.メンバーが集まらない時にも増えたときにも----3人以下の室内楽&5人以上の弦楽合奏曲


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