Triennale クレモナ国際バイオリン製作コンクール

クレモナで3年に一度行われるネームバリュートップクラスの バイオリン製作コンクール。過去には日本人も多く入賞していたが、 今回はほとんど名前が出てこなかった。1次審査を通過したもの が展示される。


Primo1位のバイオリンはJan Spidlen氏(チェコ)の、裏板が非常にインパクトな もので、もちろん細工も美しく、左右のシンメトリックな点も文句無し。 ニスが薄めでそれがまた巧く杢の美しさを引き出している。 横板まで同じ杢の材料を使用できているのが見た目を一層豪華にしている。 これほど派手な裏板は他には見られなかった。

少しだけ表右肩にエイジングをかけてあるので、多少の風合いを出す程度の ことは許されるのだろう。

チェロのPrimoはRaymond Schryer氏(カナダ)で、メープル材はおそらく カナダ材かアメリカ北部か、ヨーロッパ材と木目の雰囲気が異なり、以前自分が作った チェロの材料にも似ている。とにかく、バイオリンと同様、「目立つ」印象の 楽器。細工が性格なのはもちろんだが、コーナーのパフリングの内側(Punto)を 失敗したのか少し黒ずんでいるように見えたが、ほかのバイオリンとかも 結構その程度のものは多く、この点は審査基準としては甘く見られるところか。 ニスの塗りはやや薄いような気がした。表面がピカピカしてなく (他1点のアメリカ製もそうだが)木の表面の凸凹を少し残した感じ。 とにかく、このチェロは音が飛びぬけて良かったらしく、1位になったという うわさ。ちなみに、弦は上2本がEva,下がスピルコアでベルギー駒。

ビオラ、コントラバスは1位は無し。ビオラは中国の3位のが巧く、雑さが無く 良い印象だった。コントラバスはM.Nolliの一人勝ち。

 全体的な感想として、オールドっぽくしてある楽器は 皆無だったし、奇抜なものも少なく、パフリングの凝ったものもほとんど無い。 基本的にどのバイオリンも作者がどの国の出身であれ、イタリアンを意識した スタイルで、クレモナで勉強したらしい人やその周辺ゆかりの製作者が多いのか、 みな似たり寄ったり。
 展示作の出身国は、イタリアがやはり多く次にチェコの大健闘で、今後の評価が上がるのか。 あとは中国、ブルガリア、ドイツがめだち、フランス人は2本、イギリスからは0。 アメリカは1つ。日本人はたしか、、、?人くらい。詳しくは 高橋明ヴァイオリン工房をご覧ください。すばらしくまとまってます。 1次予選を通過しなかったバイオリンは、入り口横にある別室で、ドアの 小窓からちょっと覗ける感じで保管されているのが見えたが、そんなに数はなさそう。 30台くらいか。
 レベルに関する下馬評は、2位の作品のほうが評価が高かった(結局、同人物だが)。 また、全体がそこそこ止まりのレベルだったと言う人が多く、1位の作品は文句はないけど 驚嘆に値する出来ではないという感想が聞かれた。


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